心理カウンセラー 長谷川由紀のブログ

米国ニューヨーク州公認の心理カウンセラーが心について解説します

その不安、睡眠不足のせいかも?

睡眠が不足することによってイライラしたり、気分が優れなかったりすることは、経験的に容易に想像できるのではないかと思います。しかし、睡眠不足と不安の関係について考えたことはあるでしょうか。 2024年4月号の『Psychological Bulletin』という雑…

米国ニューヨーク州公認心理士が心についてお話しするブログです

私は米国ニューヨーク州公認心理カウンセラーです。米国のコロンビア大学臨床心理学修士課程を修了し、資格を取得、当地で開業してカウンセラーとして活動していました。ニューヨークで10年ほど暮らした後、現在はシンガポールに拠点を移し、引き続きカウ…

トラウマは現在進行形<フラッシュバックのメカニズム>

先週から数回にわたり、危機的状況に陥ると「闘争・逃避反応」(扁桃体ハイジャック)を起きることをご紹介しました。「危機的状態」といってもさまざまなものがありますが、強度によってはトラウマ(PTSD)として残る場合があります。今回はこれまでご説明…

感情チャート<感情の種類、どれだけ知っている?>

前回のブログでは、気持ちを落ち着ける方法として、感情を言葉にする(Affect Labeling)というテクニックをご紹介しました。感情を的確に言い表す言葉を見つけるのは簡単なことではありません。しかし、前回の記事で書かせていただいた通り、私は感情表現の…

感情に振り回されない方法<気持ちを言葉にする>

前3回にわたって、脳の中にある小さなアーモンド型の扁桃体が活発になると、感情に振り回されてしまうことがあるというお話をしました。今回は、感情的になってしまったときにどうやって気持ちを落ち着け、理性を取り戻すことができるか、簡単にできる方法…

感情に支配される<扁桃体ハイジャック?!>

不安や恐怖、怒りといった強いネガティブな感情によって扁桃体が活性化されると、理性を失い、感情に振り回される状態になるというお話を前2回にわたってしました。このように、感情に体と脳を乗っ取られてしまったような状態はまるで、ハイジャックされて…

脳科学から理解しよう<闘争・逃避反応>

前回の記事では、私たちが理性を失ってしまうとき、その原因となる「闘争・逃避反応」について解説しました。今回は、なぜこの反応が起きるのか、脳のメカニズムからご説明します。(以下、分かりやすさのためにかなり簡素化している点をご了承ください。) …

「闘争・逃避反応」(fight-or-flight respons)とは

感情に支配されてしまい、理性的な思考や行動がとれなくなってしまう そうした悩みをご相談いただくことがよくあります。気持ちを落ち着けて理性を取り戻すことは、仕事や学業、そして友達・家族・職場といったあらゆる人間関係において、とても重要なスキル…

カウンセラーの本棚1<『生きるに値する人生を自分で作る:ある心理学者の自伝 (Building a Life Worth Living: a Memoir)』>

はじめに アメリカと日本を取り巻くメンタルヘルス事情の違いの一つとして、私は心理関連の書籍の数に大きな差を感じます。米国では心理学者や資格を持ったカウンセラーが執筆した専門書および一般向けの読みやすい本が数多く出版されています。こうした本が…

解釈を変えれば気分も変わる3<ChatGPTに聞いてみよう>

前回の記事ではご自身の解釈が唯一ではないことに気が付くために、他の人の解釈を聞くという方法についてお話いたしました。しかし事例でご紹介したAさんのように他者の目がとても気になる人にとっては、誰かに解釈を求めること自体がストレスになる可能性が…

解釈を変えれば気分も変わる2<他の人に聞いてみよう>

前回の記事では一つの事象に対する解釈は人それぞれ、千差万別であるというお話をしました。今回は、ご自身の解釈の癖にとらわれず、複数の解釈に目を向ける方法について解説します。 ご自身の解釈を絶対の「真実」と思い込んでしまうのはよくあることです。…

解釈を変えれば気分も変わる1<解釈は千差万別>

他者と話していて、ものの捉え方、感じ方の違いに驚いたことはないでしょうか。 私の場合、親しい友人との間に次のようなことがありました。 いつもとても勤勉な友人ですが、ある日疲れが溜まっていたのか始業時間から2時間も寝過ごしてしまいました。いつ…

ブログ再開

この数ヶ月、ブログの更新をお休みしておりました。 その間、アメリカでの出産や初めての育児、シンガポールへの移住など、さまざまな変化がありました。 新しい経験を通して得た知見をもとに、みなさまの暮らしに役立つ記事を更新していきたいと考えており…

なぜいつも同じような人を好きになる?3<親子関係で満たされなかった願望>

前回の記事では、知らず知らずのうちに親と似た特性を持つ人に惹かれてしまうことがあるということをご説明しました。今回の記事では、どうしてそのような現象が起きるのかをご説明します。 心理学では、親と似た雰囲気、性格の人と交際することにより、親と…

なぜいつも同じような人を好きになる?2<親と交際相手に類似点?!>

前回の記事では、G子さんはいつも同じようなモラハラ男を好きになりがち、ということに気が付きました。今回の記事では、G子さんがそうした好みのタイプを持つに至った背景について探ります。 心理学では、私たちがどのような人を好きになり、どのような恋愛…

なぜいつも同じような人を好きになる?1<タイプを知ろう>

多くの人が恋愛において「好みのタイプ」を持っていると思います。その好みのタイプが、交際することであなたの幸せが増すようなものだとよいのですが、中には自分を辛い目に遭わせたり、利用したり、けなしたりする相手をいつも好きになってしまう人もいま…

日米のカウンセリング事情2<カウンセリングに対する意識の差>

前回の記事『日米のカウンセリング事情1<保険適用の有無>』では、米国においては医療保険でカウンセリングがカバーされることが普及の背景にあることをご紹介しました。今回は、日米のカウンセリングに対する意識の違いについてご紹介します。 これまでの…

日米のカウンセリング事情1<医療保険適用の有無>

日本でも近年メンタルヘルスやカウンセリングについて話題にされることが少しずつ増えてきたと思いますが、多くの人が気軽にカウンセラーに相談をするという習慣が根付くには、まだまだ乗り越えなければならない制度的・文化的障壁が残されていると感じてい…

いつも振り回されてばかりの恋愛4<恐怖を乗り越える>

前回の記事『いつも振り回されてばかりの恋愛3<合わせてばかりだと相手から大切にしてもらえない>』では、Fさん(33歳女性、会社員)の事例を使って、相手に好かれようと自分を犠牲にして尽くすと、逆に大切にされなくなってしまうことがある、ということ…

いつも振り回されてばかりの恋愛3<合わせてばかりだと相手から大切にしてもらえない>

前回の記事『いつも振り回されてばかりの恋愛2<自分を犠牲にして尽くしてしまう>』では、Fさん(33歳女性、会社員)の事例を使って、自分の気持ちを表現することが苦手になってしまう原因についてご紹介しました。今回は、その結果、相手から大切にしても…

いつも振り回されてばかりの恋愛2<自分を犠牲にして尽くしてしまう>

前回の記事『いつも振り回されてばかりの恋愛1<私は愛されない人間なのか?>』ではFさん(33歳女性、会社員)の事例をご紹介しました。今回は、Fさんが相手の男性にどんなに振り回されても耐え続けた背景について見てみましょう。 ドタキャンされたり、音…

振り回されてばかりの恋愛1<私は愛されない人間なのか?>

いつも相手に振り回されてばかり… こちらは尽くしてばかり… でも結局振られてしまう… このような恋愛を経験されたことはあるでしょうか。一度のみならず、繰り返しこうした恋愛パターンを経験されている方もいらっしゃるかもしれません。心理学では、幼少期…

恋のトキメキはどうして終わる?3<トキメキが失われた後の関係を楽しむ>

『恋のトキメキはどうして終わる?1,2』ではトキメキが発生・消失する仕組みについてご説明しました。今回はトキメキが失われた後の関係を楽しむ方法についてお話します。 ドーパミンは、期待していたよりも大きな報酬が得られたときに放出されるとお話し…

恋のトキメキはどうして終わる?2<関係が安定するとドーパミンは減る>

前回の記事で、トキメキはドーパミンによって作り出される感情であることをご説明しました。今回は、そのトキメキに必ず終わりが来ることについてお話します。 D子さんとE太さんの事例を引き続き使ってご説明します。今回もおそらくドーパミンが放出されてい…

恋のトキメキはどうして終わる?1<トキメキが起きる仕組み>

出会った頃は相手のことを考えただけでドキドキワクワクしたのに、しばらくしたらドキドキしなくなった。これって別れるべきサイン?(Aさん、女性、20代学生) 相手の猛アプローチで始まった恋愛で最初からトキメキを感じなかったが、交際してみるといつの…

脳の構造は変えられる?6 < ポジティブな感情をじっくり味わおう>

前回のブログ記事『脳の構造は変えられる?5』では、幸せを感じやすい脳に変えていくための手軽なトレーニング方法の1つ目「 “ありがたい” に気付く」をご紹介しました。今回は2つ目のトレーニング方法として、「ポジティブな感情をじっくりと味わう」を…

脳の構造は変えられる?5 < “ありがたい” に気付く>

『脳の構造は変えられる?4』では、メディテーションにより左前頭葉(ポジティブな感情を司る部位)の活動が活発になり、日々の幸福感が向上すること実証した実験をご紹介いたしました。メディテーションについては現在日本でも書籍やインターネット上で多…

脳の構造は変えられる?4 <幸せはトレーニングで体得できる⁉>

『脳の構造は変えられる?3』では、脳が幸・不幸に反応する仕組みと、「幸福の既定値」という概念をご紹介しました。今回は、「幸福の既定値」は変えられることを示唆する近年の研究についてご紹介します。 この研究は、前回の記事でも登場したリチャード・…

脳の構造は変えられる?3 <脳と幸せ・幸福度の既定値とは>

『脳の構造は変えられる?1,2』では、神経回路が強化されていく仕組みと、その具体例をご紹介しました。今回は、脳の構造をより深く理解するために、幸せ・不幸を感知すると脳はどのような反応をするのか、ということに加えて、「幸福度の既定値」という…

脳の構造は変えられる?2 <習慣化した思考パターン>

前回「脳の構造は変えられる?1」では、習慣化思考パターンによって、それに対応する神経回路が反復して使われることにより強化されていく仕組みを解説いたしました。 今回は、神経回路が実際に私たちの生活にどのように影響するのか、長年うつ病と不安症に…