心理カウンセラー 長谷川由紀のブログ

ニューヨーク在住の心理カウンセラーが心について解説します

“面倒くさい・後回しにしよう”の心理6<怒りが原因の場合:口やかましく追い立てられる不快感>

これまで前5回では、「失敗への恐怖」が原因で面倒くさい・後回しにしようと考えてしまう事例を取り上げてきました。しかし、実際には恐怖以外にも、後回しにしたくなる要因にはさまざまなものがあります。そこで本記事では、「怒りが原因の場合」についてもご紹介いたします。こちらも、恐怖が原因となっている場合に並んでよく見られるケースですので、是非ご参考にしていただければと思います。

 

今回は、Dさん(男性、会社員、35歳)の事例を使って考えてみましょう。

 

Dさんは私生活でも職場でも、面倒くさい…と後回しにしてしまう癖にしばしば悩まされていました。そこで、どんなときに面倒くさいと感じますか、と尋ねました。
「タスクがいくつか積み上がってきたときです。一つ一つのタスクは大したものではなくて、単に歯医者に予約をするとか、手短なメールを一本書くとか、やってしまえば短時間で済むことなのに、やらなきゃいけないことが増えるとなんだか手がつかなくなるんです」とDさん。

 

この事例のように、一つ一つの用事は大して難しいことでも時間を要することでもないのに、何となくやる気が出なくて後回しにしてしまった経験はないでしょうか。「失敗への恐怖」が原因の場合に比べて、不安や焦燥感が少ない分、面倒くさい・後回しにしようと考えてしまっていること自体に気が付くことがより難しく、無意識のうちに数ヶ月、場合によっては数年にもわたって「後回し」にしてしまうこともあるかもしれません。失敗への恐怖が原因の場合と同様に、まずは面倒くさい・後回しにしようと思うときの背景にある感情を探ってみましょう。

 

タスクが積み重なってきたとき、どんな気持ちになるのかDさんに尋ねました。
「なぜかイライラし始めるんです。まるで理不尽な要求でも突きつけられているときのような苛立ちです。そしてちょっと不貞腐れたような気持ちになります」と描写されました。

 

『“面倒くさい・後回しにしよう”の心理1』でご紹介したBさんの事例と同様に、まず面倒くさいと思ったときにどんな感情がその背景にあるのか探るのが大切です。次に、どのようなときにこの感情を感じてきたか、過去にまでさかのぼってパターンを探ってみましょう。

 

Dさんは過去の記憶をさかのぼることで、どのようなシチュエーションでこの感情を感じてきたか、思い当たることがありました。
「私の父はすごく口うるさくて、『あれしろ、これしろ、あれはやったか』って子供の頃はいつも言われ続けていたんです」とDさん。
「父は長男として生まれ、子供の頃は留守がちな父親に代わって母親と二人の弟を助け、家を守ってきたそうです。庭仕事や家の修繕等、よく働いたと言っていました。そのせいもあって、長男の私が手伝いをするのが当然という雰囲気があって、父に指示されると嫌だとは言えなかったし、手伝っても “ありがとう”と言われることは少なかったような気がします。むしろ言う通りにしてもあれこれダメ出しされたりして、またやらなきゃならないことが増えたりして…」

 

 

Dさんの「理不尽な要求でも突きつけられているときのような苛立ち」「ちょっと不貞腐れたような気持ち」はこうした過去からの影響もあるのかもしれません。実際には、その他の経験から受ける影響や遺伝的要因等、いろいろな可能性が考えらますが、こうして過去のパターンを探ることによって、自分がどのようなときにどのような感情を持ちやすいのかを知る良いきっかけとなります。

 

次回、『面倒くさい・後回しにしよう”の心理7』では、今回探ったパターンを理解した上で、面倒くさいタスクをこなしいているときの自分がどのような言葉を自分にかけているのかを探ってみましょう。

 

長谷川由紀

www.yukihasegawa.org

 

☆おことわり☆

本ブログ内の記事は、精神科・心療内科等での治療を代替するものではありません。必要に応じて医師・心理カウンセラー等に直接ご相談ください。

※ 本ブログの事例にて紹介されている人物や状況は、全て架空のものです。セッションを通して伺ったお話をブログにて公開することはありません。