心理カウンセラー 長谷川由紀のブログ

米国ニューヨーク州公認の心理カウンセラーが心について解説します

“面倒くさい・後回しにしよう”の心理7<怒りが原因の場合:自分にどんな言葉をかけている?>

前回『“面倒くさい・後回しにしよう”の心理6』では、口やかましく追い立てられたときの不快感・怒りによって「面倒くさい」と感じて後回しにしてしまう事例をご紹介しました。今回は、面倒くさいタスクをこなしているときの自分自身にどのような言葉をかけているのかを探ってみましょう。そうすることで、なぜ「面倒くさい」と感じてしまうのかが見えてくるはずです。今回もDさん(男性、会社員、35歳)の事例を使います。

 

お父さんの手伝いをしてもあまり感謝された記憶がなく、次から次へと用事を言いつけられ、言う通りにしても細かい点をダメ出しされる…そんな幼少期の記憶があるDさんに、では仮にお父さんにどのように接してもらえたらお手伝いがもっと楽しくできたと想像しますか、と尋ねました。
「『ありがとう』『助かった』『○○が上手だね』とか、感謝や褒めの言葉をもらえたら嬉しかったと思います」とDさん。

 

幼少期の体験を振り返ることで、手伝いをしたときにもっと褒めてほしかった、という願望にDさんは気が付きました。次に、Dさんが苦手とする短時間で済むタスクが積み上がった状態に陥ったとき、Dさんはどのように自分自身に接しているかを探りました。

 

「すごくイライラしています。頭の中では『こんな簡単なことをどうしてすぐできなかった!』『早く対処してれば面倒なことにならなかったのに』『グズ!怠け者!』と自分を責める言葉が次から次へと浮かんできます』とDさん。
さらに、タスクが済んだ後はどのような気持ちになりますか、と尋ねました。
「一つ一つは簡単なタスクなので達成感はないです。どちらかというと、『どうしてこんな簡単なことをここまで放置してしまったのだろう?恥ずかしい…』といった、責めの言葉や誰に感じているのかも分からない罪悪感・恥を感じます」とDさんはお話しになりました。

 

このような言葉をご自身にかけていれば、おっくうになって後回しにしたくなるのも当然です。そしてこうした言葉を振り返ることでDさんはあることに気が付きました。それは、Dさんが手伝いをしたときにお父さんがダメ出しや批判をしてくることに不満を感じてきたのに、まさにDさんご自身が自分に対してお父さんと同様の態度で接している、ということでした。子供の頃に親から受けた批判を、自分自身や他者に対してついしてしまうというのはよくあることです。Dさんがご自身を褒めるべきときについ批判してしまうのは、小さい頃のお父さんとのやり取りの影響があるのかもしれません。

 

 

脳内で自分自身にどのような言葉をかけているのかを知るのは、容易なことではありません。コツは、おっくうに感じたり、頭が痛くなったり、肩や胸がこわばる等の心身のサインに気が付いたときに、ふと立ち止まって、脳内で何が起きているのかに興味を持つことだと私は考えています。どんな感情を感じたか、どんな身体感覚が起きたか、そのとき何をしていたか、を日記に書き留めてみるのもよいでしょう。そうすることで、日頃私たちがしている無意識の反応に気付いていけるはずです。そして肝心なのは、無意識の反応に気が付けたら、それを自分にとって有益になる反応に変えることができるということです。

 

次回『“面倒くさい・後回しにしよう”の心理8』では「反応を変える」という点を解説します。

 

 

長谷川由紀

www.yukihasegawa.org

 

☆おことわり☆

本ブログ内の記事は、精神科・心療内科等での治療を代替するものではありません。必要に応じて医師・心理カウンセラー等に直接ご相談ください。

※ 本ブログの事例にて紹介されている人物や状況は、全て架空のものです。セッションを通して伺ったお話をブログにて公開することはありません。