心理カウンセラー 長谷川由紀のブログ

米国ニューヨーク州公認の心理カウンセラーが心について解説します

恋のトキメキはどうして終わる?3<トキメキが失われた後の関係を楽しむ>

『恋のトキメキはどうして終わる?1』ではトキメキが発生・消失する仕組みについてご説明しました。今回はトキメキが失われた後の関係を楽しむ方法についてお話します。

 

ドーパミンは、期待していたよりも大きな報酬が得られたときに放出されるとお話ししました。ドーパミンが放出されたときのポジティブな感情は大変心地良いため、人は「どうすれば大きな報酬を得られるようになるか」と将来のことを考えたり計画したりするようになります。

 

より良いものを手に入れようとする向上心は人間にとって大切なことではありますが、度が過ぎると目の前にある幸せを感じる余裕がなくなってしまうことがあります。例えば、会社で昇進する目標を掲げて仕事に精を出していたとします。今年の昇進は無理かな、と思っていたところ、めでたく昇進できたときには大変嬉しいのですが、喜びも束の間、次の昇進に向けて計画を始めました。するとせっかく昇進したことを実感して喜ぶ余裕がなく、次の昇進に向けて現時点で足りないものばかりに目がいってしまうでしょう。

 

これは恋愛でも同じことが言えます。恋愛が始まった頃のドキドキ感が楽しいあまり、その感覚を得ることばかりを追求してしまうと、恋が成熟したときの穏やかな幸福感を味わうことが難しくなってしまいます。

 

トキメキはドーパミンによるものですが、成熟した恋愛関係からくる幸福感はオキシトシン、セロトニンといったホルモンによるものと考えられています。そしてドーパミンは先程ご紹介したように、人間に目の前で起きていることよりも未来のことを考えさせます。それに対し、オキシトシンやセロトニンは現在実際に経験している嬉しいことや心地良さがトリガーとなって放出されます。このため、成熟した愛情や信頼関係を楽しむ鍵は、過去や未来に目を向けるのではなく、現在経験している「この瞬間」を感じることのようです。

 

再びD子さんの事例を使って考えてみましょう。


D子さんはF男さんに感じたトキメキが忘れられず、E太さんとの結婚生活を寂しく思うようになっていました。

しかしそんなある日の休日、子供たちが友達の家にお泊りに行くことになり、E太さんが今晩は久しぶりに外食をしようと提案してくれました。そして二人は子供ができる前によく行っていたレストランへ。いつもは家事や仕事といった先々のことを考えがちなD子さんでしたが、この日はリラックスしてその場の雰囲気を楽しむことができました。するとそのときE太さんが、

「いつもありがとう。これからも二人で頑張っていこうね」

と言ってくれました。A子さんは心がとても温まり、E太さんへの深い愛情を感じると共に、二人で築いてきた全てのものがたまらなく愛おしくなりました。日頃、忙しさや疲れから当たり前になってしまった幸せを実感する機会がなかなかありませんでしたが、D子さんは外食して息抜きすることによって、今ここにある幸せを噛みしめることができ、それはF男さんへのトキメキをすっかりと忘れさせてくれたのでした。

 

D子さんが自然と実践した「今ここにあるものを感じ、愛でる」ということは、現在注目を集めているマインドフルネスの考え方と共通します。これといって具体的な不満があるわけではないのに、最愛のパートナーとの関係に満足できなくなってしまったときには、D子さんのようにリラックスできる環境を作り、「今この瞬間」を味わってみるのもよいかもしれませんね。

 

 

以上、全3回のシリーズ『恋のトキメキはどうして終わる?』では、トキメキが発生、消滅するメカニズムと、トキメキが失われた後にある愛情や信頼関係を楽しむ方法についてご紹介しました。トキメキを正しく理解することにより、恋愛や結婚でご自身がどのように感情と向き合い、意思決定をしていけばよいか、少しでもご参考になれば幸いです。

 

 

長谷川由紀

www.yukihasegawa.org

 

☆おことわり☆

本ブログ内の記事は、精神科・心療内科等での治療を代替するものではありません。必要に応じて医師・心理カウンセラー等に直接ご相談ください。

※ 本ブログの事例にて紹介されている人物や状況は、全て架空のものです。セッションを通して伺ったお話をブログにて公開することはありません。