心理カウンセラー 長谷川由紀のブログ

米国ニューヨーク州公認の心理カウンセラーが心について解説します

いつも振り回されてばかりの恋愛3<合わせてばかりだと相手から大切にしてもらえない>

前回の記事『いつも振り回されてばかりの恋愛2<自分を犠牲にして尽くしてしまう>』では、Fさん(33歳女性、会社員)の事例を使って、自分の気持ちを表現することが苦手になってしまう原因についてご紹介しました。今回は、その結果、相手から大切にしてもらえなくなってしまうことがあるということについてご説明します。

 

Fさんは、嫌な顔一つせずに尽くしたのにふられるなんてどうして…と疑問に思っていました。確かに私たちは、「いい人」でいれば相手から好かれると考えがちです。しかし、「いい人」の定義が「相手にとって都合のいい人」である場合、必ずしも好かれ、大切にされるとは限らないのです。

 

もちろん個人差はありますが、人間は、自分の意思表示をせずにいつも他者に合わせてご機嫌をとる行動している人がいると、「この人は何を考えているのか分からない」と感じ始め、やがてその人の気持ちを考えることをやめてしまったり、苛立ったりする傾向があるようです。そして何をしても相手が嫌な顔をしないと、「この人はどんなふうに扱ってもいいんだ」と次第に通常なら払う敬意を払わなくなってしまうことがあるようです。

例えば会社の先輩で、後輩がどんな失敗をしてもニコニコして感情を出さず、注意もしないAさんと、失敗したら厳しい表情で注意をし、次からはどのようにしてほしいと意思表示するBさんがいたとしたらどうでしょう。私たちは自然と、Bさんから頼まれた仕事の方を優先し、忙しければAさんからの頼まれごとは後回しにしたり手を抜いたりしてしまいそうではないでしょうか。

 

こうした人間関係のダイナミクスは、家族、友人、職場、そして恋愛、あらゆるところに存在します。Fさんは、交際相手にもっと好きになってもらって、大切にしてもらいたいが故に尽くしてきたのですが、どうやら「相手にひたすら合わせて自分の感情は抑圧する」というアプローチは得策ではないようです。

 

このようにお話しすると、このダイナミクスを作ったFさんに責任がある、と思われてしまうかもしれません。Fさんがこのダイナミクスを促してしまった側面はあるかもしれませんが、もちろんFさんだけに原因があるわけではありません。二人の人間により作られたダイナミクスは、二人が50/50の割合で相互作用した結果生まれるものだからです。

 

そしてもちろん、Fさんがこうした行動をとらなくても、相手はFさんを雑に扱った可能性は十分にあります。いずれにしても、Fさんは雑に扱われべきではないはずです。

 

嫌なものは嫌だと意思表示したとき、相手が言動を改めるか、それとも関係を終わらせようとするかは分かりません。そのため、これまで相手に合わせてきた人にとって、大切な人に自分の気持ちを伝えることはとても勇気のいることです。強い不安や恐怖を感じる人もいるでしょう。

 

しかし、たとえ自分の気持ちを伝えたことで関係が終わりを迎えることになったとしても、自分の気持ちを分かろうとしてくれない人から離れることは、自分自身を大切にすることの大事な一歩です。そして自分を大切にすることにより、自然と自分を大切にしてくれる人との交友関係が広がり、そうした人との交際のチャンスも増えるものと私は考えています。

 

ご自身の傾向やその原因となった過去の体験等を振り返ることにより、どのようなダイナミクスに陥りやすいかを知ることは、恋愛パターンを変える上でとても効果的です。今回は「いつも振り回されてばかりの恋愛パターン」についてみていきましたが、どのようなパターンにも同様のことがいえます。本記事が様々なパターンでお悩みの方に少しでもお役に立てれば幸いです。

 

長谷川由紀

 

☆おことわり☆

本ブログ内の記事は、精神科・心療内科等での治療を代替するものではありません。必要に応じて医師・心理カウンセラー等に直接ご相談ください。

本ブログの事例にて紹介されている人物や状況は、全て架空のものです。セッションを通して伺ったお話をブログにて公開することはありません。