心理カウンセラー 長谷川由紀のブログ

米国ニューヨーク州公認の心理カウンセラーが心について解説します

いつも振り回されてばかりの恋愛4<恐怖を乗り越える>

前回の記事『いつも振り回されてばかりの恋愛3<合わせてばかりだと相手から大切にしてもらえない>』では、Fさん(33歳女性、会社員)の事例を使って、相手に好かれようと自分を犠牲にして尽くすと、逆に大切にされなくなってしまうことがある、ということをご説明しました。

 

このダイナミクスを変えるには、自分の意思や感情をしっかり相手に伝え、嫌なものは嫌だと言えるようになることが大切です。しかし、これまで相手に合わせてきた人にとって、それは不安や恐怖を伴うものです。

 

そこで、今回はその不安や恐怖を乗り越えるのに役立つちょっとしたテクニックをご説明します。今回もFさんの事例を使って考えてみましょう。

 

今後交際相手に振り回されることがあったら、そのようにされるのは辛い、やめてほしい、と伝えてみてはどうでしょう、とFさんに提案しました。

 

「そう伝えたら、『じゃあ別れよう』と言われてしまいそうで怖いです。自分の気持ちを伝えるより、波風立てずに丸く収めたいという気持ちが勝ります」

 

とFさんは答えました。

 

確かに、自分の気持ちを伝えたときに拒絶されてしまうのはとても悲しく、辛いことです。そこでこの恐怖に打ち克つために、以前『“面倒くさい・後回しにしよう”の心理 2』でもご紹介した、「大切な誰かに置き換えて考える」というテクニックをFさんに試してもらうことにしました。

 

Fさんの愛犬ペロちゃん(メス、3歳)にもし彼氏がいたとして、その彼にペロちゃんが振り回されていたとしたらどう感じますか、と尋ねました。

 

「ペロちゃんが可哀想でいたたまれない気持ちになります」

 

とFさん。さらに、ペロちゃんが、気持ちを伝えるのが怖い、と言って我慢し続けてたらどう感じますか、と尋ねました。

 

「そんなの辛すぎます。あなたはとってもいい子なんだから、自分の気持ちをちゃんと伝えて、その気持を大切にしてくれる人と付き合ってほしい、とペロちゃんに伝えます。もし彼がペロちゃんの気持ちに聞く耳を持たないなら、残念だけどその彼とはお別れして、ペロちゃんを大切にしてくれる人を探しましょう、と言いたいです」

 

と少し涙目になりながらFさんは言いました。

 

どうやらFさんは、ペロちゃんのこととなると不安や恐怖を乗り越えて、自分の気持ちを伝えた方がよい、と思えるようです。

 

Fさんに、ペロちゃんに感じた想いをそのままご自身の状況に当てはめてみようとすると、どのような気持ちになりますか、と尋ねました。

 

「自分がどれだけ辛い想いや我慢をしていたのか、気が付くことができました。恐いけれど、これから少しずつ自分の気持ちを伝えられるようになりたいです」

 

とFさん。

 

このように、大切な誰か(家族、親友、ペット etc)に置き換えて自分の状況を考えると、自分の状況をより客観的に捉えられるようになることがあります。そして、理不尽な状況に対する怒りやこの状況から自分を守りたいという温かい強い気持ちが生まれ、そうした感情のエネルギーが恐怖や不安に打ち克つ勇気を与えてくれることがあると考えられています。

 

これまでずっと相手に合わせてきた人にとって、自分の行動を急に変えるの難しいものです。そのため「すぐに変えなければならない」と自分にプレッシャーをかけるのではなく、信頼できる友人やセラピスト等と少しずつ自分の気持ちを伝える練習をするとよいでしょう。練習を続けることで、自分を犠牲にしてしまう癖から抜け出していけるはずです。

 

これまで4回にわたって、いつも振り回されてばかりの恋愛パターンについてご説明しました。自分がはまってしまいやすいパターンを知り、より楽しい恋愛をするための参考にしていただければ幸いです。

 

長谷川由紀

 

☆おことわり☆

本ブログ内の記事は、精神科・心療内科等での治療を代替するものではありません。必要に応じて医師・心理カウンセラー等に直接ご相談ください。

※ 本ブログの事例にて紹介されている人物や状況は、全て架空のものです。セッションを通して伺ったお話をブログにて公開することはありません。