心理カウンセラー 長谷川由紀のブログ

ニューヨーク在住の心理カウンセラーが心について解説します

なぜいつも同じような人を好きになる?3<親子関係で満たされなかった願望>

前回の記事では、知らず知らずのうちに親と似た特性を持つ人に惹かれてしまうことがあるということをご説明しました。今回の記事では、どうしてそのような現象が起きるのかをご説明します。

 

心理学では、親と似た雰囲気、性格の人と交際することにより、親との間では満たされなかった願望を叶えようとする傾向がある、と考えられています。

 

たとえば前回の記事でご紹介したG子さんの場合、お父様と交際中のH男さんは、批判的で時にはモラハラ発言までする、という点で類似性がありました。

 

幼少期からお父様にダメ出しばかりされてほめられることの少なかったG子さんは、「もっといい子になったら、いつかきっとお父さんは私を認め、もっと愛してくれるにちがいない」という幻想を持つようになります。

 

実際のところは、お父様は批判的で癇癪持ちな性格であることが理由でG子さんにダメ出しをしていたのであって、G子さんがどんなに「いい子」になったところでお父様が急に優しくなって、G子さんを褒めたり、愛情表現するようになる可能性は低いように思います。

 

しかし子供は客観的に親をみることが難しく、親が怒る理由は全て自分が原因だと思う傾向にあります。そのため、G子さんの中で、自分が変わればお父様も愛してくれると信じ、「頑張ってお父さんを振り向かせたい」という願望が生まれます。

 

その願望が満たされぬまま大人になったG子さんは、お父さんと共通点がたくさんあるH男さんに出会いました。

 

そのとき無意識のうちにですが、G子さんの中に幼い頃からの願望がむくむくとよみがえり、「小さい頃は達成できなかったけど、今度こそこういう男性を振り向かせたい!」という野望が生まれたのではないか、と推測できます。

 

子供の頃にほしかった愛情を手に入れたい、という願望は強いものです。その満たされなかった願望が、「子供のときには成功しなかったけれど、大人になってパワーアップした今ならできる」ということを証明したい、という欲求につながると考えられています。

 

このためG子さんにとって、最初から優しい愛で包み込んでくれるような男性は魅力的に見えない可能性があります。それは、G子さんにとって、批判的でモラハラをしてくる男性に認めてもらって初めて得られる愛にこそ、真の価値があるからです。

このカラクリは以前『恋のトキメキはどうして終わる?』でご紹介した内容とも関連があります。トキメキを脳内に引き起こすドーパミンという物質は、「期待していたよりも大きな報酬が得られた」という、自分の予想・期待が良い意味で間違っていたときに放出される、とご説明しました。

 

G子さんにとって、モラハラ男性を振り向かせることの難しさは、お父様との関係を通して幼少期の頃からよく理解していることです。そのためH男さんにほんの少しでも優しくされると、それは期待していたよりも大きな報酬として認識され、ドーパミンが放出されやすい状態にあります。また将来H男さんがG子さんを認め、尊敬してくれるようになる、という可能性がわずかなシナリオが実現した場合、ドーパミンの大量放出が予想されるため、その快感を得るためにG子さんはさらにこの恋愛にのめり込みやすくなると考えられます。

 

トキメキが起きるメカニズムについて詳しく知りたい方は、是非『恋のトキメキはどうして終わる?』シリーズをご覧ください。

 

以上3回にわたり、いつも同じような人を好きになる心理についてご紹介しました。恋愛において、どのような「好みのタイプ」を持つのも自由で、そこに正解・不正解はありません。しかし、もしご自身が恋愛でいつも辛い想いをしていることに気が付き、これまでとは異なる恋愛をしてみたいと思ったときには、G子さんのようにご自身の好みのタイプを分析してみるのもよいかもしれません。

 

幸せな恋愛をしてみたい方々にとって、少しでもご参考になれば幸いです。

 

長谷川由紀

 

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