心理カウンセラー 長谷川由紀のブログ

米国ニューヨーク州公認の心理カウンセラーが心について解説します

不倫が発覚するとどんな心理状態になる?<まずパニックに>

はじめに

過去の記事の中で恋愛に関する内容に最も多くの反響があったため、今後何回かにわたって、恋愛の中で起きる問題の中で特に心理的ダメージの大きい不倫についてお話しする予定です。

不倫により影響を受けた方々が気持ちを整理しやすくなり、そして今後どうすればよいかを考えやすくなることを目的に書いています。パートナーに不倫をされて傷ついている方はもちろんのこと、逆に不倫をしてしまい悩んでいる方、あるいは身近な人(親、子、友人、同僚など)の不倫に直面してショックを受けている方など、それぞれの立場の方々が困難を乗り越える上でお役に立てれば幸いです。
 
第一回目の今回は、パートナーの不倫が発覚したときどのような心理状態になるかをお話します。そこでまず、夫に不倫をされて傷ついたA子さん(40代、会社員)の事例を使って考えてみましょう。
 
A子さんは夫B男さんとともにカップルカウンセリングを受けるためにやってきました。

A子さんは一目見ただけでも心が乱れていることが分かる状態でした。その横でB男さんは緊張した面持ちでうなだれています。何があったのか状況を尋ねました。

A子さん:「最近夫は仕事が忙しいということで、帰りが遅くなる日が増えていたんですが、ある日深夜に酔っ払って帰ってきた夫がLINEの画面を開いたままソファに寝ていて、見たら不倫相手の女性とのやりとりだったんです。さかのぼったら3年前から同じ女性と不倫関係にあったことが分かりました」

とお話になった後、「頭にくるし悲しいし、もうどうしたらいいか分からなくて」と顔を覆って泣き出しました。いろいろな感情が押し寄せ、パニック状態になっていることが伺えました。

 

A子さんのように、不倫を知った直後はパニック状態に陥るため、「どうしたらよいか分からない」という状態でカウンセリングにいらっしゃる方が多いです。そして怒りや悲しみの感情が非常に強く出てくるため、涙が止まらない等、理性的に話すことが難しくなるものです。

不倫が発覚したばかりのカップルとのカウンセリングでは、感情的にヒートアップした状態のセッションが最初の数週間続くものです。最近パートナーの不倫が発覚して現在パニック状態にある方は、多くの人がそのように反応することを理解し、理性的になれないご自身を批判したりせずに受け入れましょう。普段は怒りや悲しみをあまり表に出さない方が「自分がこんなに怒り狂うことができるなんて信じられない」とご自身の反応に驚かれたり、ショックを受けたりすることもよくあることです。


そして不倫をしてパートナーをパニック状態にしてしまった方は、相手がパニックになって当然であるということを認め、謝罪や状況の説明をしても冷静に聞いてもらえない状態がしばらく続くことを理解しましょう。まずはパニック状態から抜け出さなければ話し合いは難しいので、逆切れや相手を責めたりすることによって状況を悪化させないようにしましょう。

 

さて、当然の反応ではありますが、なぜこのようにパニックの状態になるのでしょうか。それは、不倫発覚によって非常に強いさまざまな感情がひとかたまりになって津波のように押し寄せ、大きな心理的ダメージになるからだと考えられます。感情が複雑に絡み合っている状態では、ご自身がどんな気持ちを感じているのかを認識し、言葉で表現することが難しくなるものです。しかし、過去の記事『感情に振り回されない方法<気持ちを言葉にする>』でご紹介したように、感情を言葉にすることで気持ちが落ち着き、パニック状態から抜け出しやすくなるといわれています。


非常に強い心理的ダメージを受けたとき、感情に向き合い言葉にするのを辛く感じる方も多いと思います。それに、不倫が発覚したら傷つくのは当然なので、「わざわざ話す必要ないだろう!」という声も聞こえてきそうです。しかし、感情を話すことで次のようなメリットが考えられます。

 

・パートナーに不倫をされた方が、なぜ傷ついているのかを言葉に表現しやすくなり、その結果、心が整理されることによって、パニック状態からの回復が期待できる。
・不倫をしてしまった方が、相手がどんなことに傷ついているのかを理解しやすくなるため、傷ついた心に寄り添いやすくなる。
・双方で傷の理解が進むことによって、話し合いがしやすくなる。
・傷を理解することによって、関係を修復するか、終わりにするかの選択がしやすくなる。

 

不倫発覚後には、別れるか別れないか等、カップルにとって大切な決断をしなければならない場面がたくさん出てきます。そうした決断をパニック状態のままするのではなく、お互いに冷静に話し合える状態になってからすることで、新しいチャプターに進みやすくなるはずです。

 

そこで次回の記事では、パートナーに不倫をされた方が具体的にどのような点で深く傷つきがちかをご紹介します。

 

 

長谷川由紀

 

☆おことわり☆

本ブログ内の記事は、精神科・心療内科等での治療を代替するものではありません。必要に応じて医師・心理カウンセラー等に直接ご相談ください。また本ブログの事例にて紹介されている人物や状況は、全て架空のものです。セッションを通して伺ったお話をブログにて公開することはありません。