心理カウンセラー 長谷川由紀のブログ

米国ニューヨーク州公認の心理カウンセラーが心について解説します

その不安、睡眠不足のせいかも?

睡眠が不足することによってイライラしたり、気分が優れなかったりすることは、経験的に容易に想像できるのではないかと思います。しかし、睡眠不足と不安の関係について考えたことはあるでしょうか。

 

2024年4月号の『Psychological Bulletin』という雑誌に、過去50年間に行われた154件5,717人を対象とした睡眠不足に関する研究を解析した結果が発表されました。それによると①睡眠を全くとらない、②睡眠時間を通常より減らす、③睡眠中に複数回起こす、という3タイプ睡眠不足状態のいずれの場合でも、心拍数が上昇する、何かを不安に感じる、といった不安症状が強まるという結果が得られといいます。またその他にも、幸せや喜びといったポジティブな感情を感じにくくなるという結果も出ました。

 

ポジティブな感情を感じにくくなるという結果に対しては個人的にさほど驚きを感じなかったのですが、不安が強まるという結果には新鮮さを感じると共に、過去の経験を振り返ってなるほど、と思いました。

 

現在1歳になる娘がおりますが、出産直後から数ヶ月、普段の自分よりも不安を感じやすかったことを覚えています。初めての育児で多少不安を感じることがあるのは当然かと思いますが、当時の私は些細なことで不安を感じるのと同時に、心のどこかで「どうしてこんなことで不安になっているんだろう?出産前はこんなではなかったような…」と客観的に自分をみて不思議に思う気持ちがありました。

 

当時の私は疲れやすかったりするのは睡眠不足のせいもあるだろうと考えることはできていたものの、不安についても睡眠不足の影響を受けているかもしれないとは思っていませんでした。しかし今振り返ると、新生児期の育児で睡眠時間が減ると共に、2−3時間おきに起きるという断続的な睡眠しかとれなかったことも、いつもより不安を感じやすくなっていた要因の一つなのではないかと思います。

出産直後のお母さん、お父さんがゆっくりと十分な睡眠をとることはなかなか難しいと思いますが、睡眠不足と不安の関係を知ることによって、強い不安を感じたときにも「あ、これは睡眠不足のせいかも」と少し冷静になることができるかもしれません。

 

産後のクライアントさんからよく不安についてご相談を受けます。育児に関して強い不安を感じ、その不安を解消しようとネットでいろいろ調べていると、あっという間に数時間経ってしまい、さらに根拠のない情報で不安が一層つのってしまう…といった状況をよく耳にします。そのようなときに、「これって睡眠不足のせいかも」と考えることができれば、余計に不安になるような行動をやめて、少しでも休息をとる、といった建設的行動をとりやすくなると思います。不安に丸呑みにされて振り回されてしまうのと、不安を感じつつも「これって睡眠不足のせいかも」と一歩下がって不安と距離をとるのとでは、大きな違いがあると思うのです。

 

そして不安と鬱(うつ)は強い相関関係にあるといわれており、不安症とうつ病は同時に発症するケースが多くみられます。産後うつの発症の背景にはホルモンバランスの急激な変化等、さまざまな要因があるといわれていますが、睡眠不足と不安の関係も多いに影響しているのではないかと思います

 

今回は産後育児や産後うつといった状況を具体例として睡眠不足と不安についてお話ししましたが、産後や育児に限らず、仕事や学業、介護といったあらゆる局面で睡眠不足は起きます。そうした状況で強い不安を感じたときに、少しでも参考にしていただければ幸いです。

 

 

長谷川由紀

 

☆おことわり☆

本ブログ内の記事は、精神科・心療内科等での治療を代替するものではありません。必要に応じて医師・心理カウンセラー等に直接ご相談ください。また本ブログの事例にて紹介されている人物や状況は、全て架空のものです。セッションを通して伺ったお話をブログにて公開することはありません。