『ネガティブな自己認識2』では、ネガティブな自己認識に気が付くためのコツを紹介いたしました。今回は、ネガティブな自己認識を手放すのがなぜ難しいのかを解説いたします。
私のクライアントさんから時折次のようなご相談を受けます。
「ネガティブな自己認識に気が付き、またその成り立ちも理解できたけれど、それでも実際にこの自己像から解放されるのが難しい…」
それもそのはずです。セラピーを通してネガティブな自己認識を持っているということに気付くまでの数十年、ずっとこの自己像と共に生きてきたのですから。
また、ネガティブな自己認識を手放すことに恐怖を持っている方も多くいらっしゃいます。というのも、ネガティブな自己認識は自己防衛の役割も果たすためです。
「ネガティブな自己認識1」でご紹介した子供の例を使って考えてみましょう。
そしてこの子供は、学校の先生や友達も母親が示した反応と同様の反応をする可能性があると予測し、怒りを買わないように注意して行動するようになります。 そうすることで、拒絶されたり、怒りの矛先となることから自分を守るのです。
(※本事例は理解を促進する目的で簡素化して書かれています。現実には、同じ経験をしたすべての子供が同様の思考パターンを形成し、同様の自己防衛方法を取るわけではありません。実際には、遺伝的要素、外部環境、経験等さまざまな要素が影響し合うことで思考パターンや自己防衛方法は形成されていくと考えられます。しかしながら、幼少期の経験を振り返り、自身がどのようにその経験を認識したか、どのような感情を抱いたかを探ることにより、自分が持つ思考パターンや自己防衛方法に気が付く良いきっかけになると考えられます。)
この子供の事例のように、多くの人は不確実なことがあると不安や恐怖を感じ、これまでの経験で形成された思考パターンや自己認識を参照しながら何が起こるかを予測しようとします。たとえその思考パターンや自己認識で予測される将来が「誰も自分の要求や願望に興味なんか持ってくれない」、「自分は人に好かれない」という悲しいものであったとしても、「何が起きるか分からない」、「他人がどう反応するか分からない」という不確実な状況よりは、事前に対策を講じることができるため安心感が得られるのです。
不確実なものを受け入れる、不確実なことに寛容でいる。
こうした態度を身につけることで、自分の可能性を狭めてしまうような思考パターン・自己認識を少しずつ手放していくことができます。
次回「ネガティブな自己認識4」では、ネガティブな自己像を手放す実践的方法についてご案内いたします。
長谷川由紀
☆おことわり☆
本ブログ内の記事は、精神科・心療内科等での治療を代替するものではありません。必要に応じて医師・心理カウンセラー等に直接ご相談ください。