心理カウンセラー 長谷川由紀のブログ

米国ニューヨーク州公認の心理カウンセラーが心について解説します

ネガティブな自己認識2 <自己認識に気付くには>

前回「ネガティブな自己認識1」では、その自己認識がどのように形作られるのかをご案内いたしました。今回は自己認識を察知するコツをご紹介いたします。

 

ネガティブな自己認識に気付く一番のコツは、日々の生活を送る中でご自身が持つ感情・思考に注意を払うことだと私は考えています。

 

朝起きたとき、料理をしているとき、家族・友達・同僚と話しているとき、仕事・勉強をしているとき、ベッドに入るとき―その瞬間瞬間に何を感じているでしょうか。

自分の感情・思考を察知するのは想像よりも難しく、多少の訓練が必要です。最初は思うようにできなくて当然です。まずは注意を払うように心がけるところから始めましょう。

 

心がけを続けていくうちに、ふとしたときにネガティブな気持ちに気付くようになるでしょう。

停滞感、不満、落ち着かない、ソワソワする…注意を払っていなければ気付かないような、かすかな感情かもしれません。

こうした感情を察知できたとき、それがネガティブな自己認識を理解する絶好のチャンスです。次の事例を使ってご説明します。

 

A子さん(40歳・主婦)は料理が嫌いでした。ある日、人参を千切りにしているときにかすかな苛立ちを感じていることに気が付きました。そのときどんなことを考えていたのですかと尋ねると、「私の千切りは不揃いで醜い」「私は料理が下手だ」と考えていたとお答えになりました。その考えは真実でしょうかと尋ねると、「小さい頃から料理の手伝いをするといつも母から下手だ、要領が悪いと叱られてたので、おそらく真実なのでしょう」と。しかし実際には、ご主人とお子さんはA子さんの手料理が大好きで、いつも美味しいと言いながら食べてくれるそうです。そしてよくよく考えると、A子さんもご自身の手料理はなかなか美味しいと思っていることに気が付かれました。「料理が下手だ」という自己認識は現実を反映したものではなかったのです。 

 

A子さんは、料理をしているときに出てきた小さな不快感を捉えることで、①感情を察知し、②その感情が出てくる原因となった思考を突き止め、③これまでの自己認識が現実とは異なることに気が付くことができました。 料理が下手だと自己批判をしながら料理をするのはとても辛かったはずです。セッションを通して間違った認識を手放し、本当は料理が上手いということを正しく認識していくことで、A子さんの料理嫌いは克服されていきました。

 

そしてA子さんのネガティブな感情・思考パターンは料理だけに留まらず、「何をやってもうまくできない」という自己認識につながっていることも分かりました。この自己認識のために、会社で働くことを諦め、趣味を見つけることも難しく、子育ても失敗しているのではないかと常に不安ばかりで楽しめず、あらゆる側面でA子さんを苦しめていたのです。

 

 

A子さんの事例では、かすかなネガティブな感情から自己認識を紐解くことをご説明いたしました。しかし、現在このブログを読んでくださっている方の中には、強い悲しみや苦しみの真っ只中にいらっしゃる方もいることと思います。

強いネガティブな感情は誰もが避けたいと考えるものですが、サイコセラピー(カウンセリング)では、苦しみは人間的成長の絶好のチャンスと捉えます。

強い悲しみ、恐怖、恥といった感情があるとき、私達は何が自分を苦しめているのかをはっきりと認識しやすく、またその苦しみから解放されたいという強い願望を持ちます。

この苦痛の認識と幸福への願望が、改善の原動力になり、変えたい感じ方・考え方を照らし出してくれるのです。

 

小さな苦しみも大きな苦しも、より自由に幸せになるための方法を教えてくれる道標です。苦しみから目をそらすのではなく、「この苦しみは何だろう?どこから来るのだろう?」と興味を持てるようになると怖れから解放されていきます。

 

ネガティブな自己認識を察知するプロセスまとめ:

①感情を察知する(ex. 料理をしているときに苛立ちに気付く)

②その感情の原因となる思考を突き止める(ex. A子さんの事例:「私は料理が下手だ」)

③自己認識と現実が異なっていないか、論理的に考える

 

次回「ネガティブな自己認識3」では、ネガティブな自己像を手放すのがなぜ難しいのかを解説いたします。

 

長谷川由紀

www.yukihasegawa.org

 

☆おことわり☆

本ブログ内の記事は、精神科・心療内科等での治療を代替するものではありません。必要に応じて医師・心理カウンセラー等に直接ご相談ください。