心理カウンセラー 長谷川由紀のブログ

米国ニューヨーク州公認の心理カウンセラーが心について解説します

ネガティブな自己認識1 <自己認識の成り立ち>

自分はどこかおかしい気がする...

何をやっても自分はダメだ…

誰も本当の自分を好きになってはくれない…

 

このように自分のことを考えている方は想像以上に多いのではないでしょうか。

私のクライアントさんにも、客観的にはとても素敵な方なのに、自分のことを全く良く思えないという方がたくさんいらっしゃいます。

こうした主観と客観の認識のズレは、程度の差こそあれ、多くの方々が持っているものです。

 

こうした認識のズレはなぜ生まれるのでしょう。

 

誰しもがそれぞれ認識の仕方の癖・傾向を持っているものです。例えば、ネガティブに物事を認識する癖がついている人にとっては、自分のことも必要以上にネガティブに認識する傾向が強くなることが予想されます。この認識の仕方の癖・傾向の形成には、遺伝的要素、外部環境、これまでの経験等、さまざまなものが複雑に影響すると考えられています。今回は、その中でも、幼少期の親子関係がいかに影響しうるか、について考えてみましょう。

 

たとえば、3歳の子供がお母さんの関心を引きたくてお母さんを何度も大声で呼んだとき、お母さんから返ってきたのが「うるさい!」という激しい怒りだったという事例を考えてみましょう。
この子供は、関心を引きたいと思ったことがとても悪いことなんだ、と瞬時に解釈してしまうことでしょう。
お母さんが理不尽に子供を怒鳴りつけてしまった背景には、忙しくてイライラしていた、第二子を妊娠していて体調が悪かった、お父さんと喧嘩して鬱憤が溜まっていた、と様々な要因があったかもしれません。しかし、思春期を迎える前の幼い子供にとって親は絶対的に正しい存在のため、理不尽に怒られたときも必ず自分が何か悪いことをしたので怒られたのだと解釈してしまうものなのです。
こうした経験は程度の差はあれ誰もが持っているものです。それは私達自身が完璧ではないように、親もまた完璧にはなり得ず、不必要な怒り、恐怖、不安を子供に向けてしまうことがあるためです。

 

このような状況をたまにではなく日常的に繰り返し経験した子供、特に「怒られる・怒鳴られる」といった刺激に対して敏感に反応する子供である場合、こうした記憶は恐怖体験として脳に深く刻み込まれることが予想されます。恐怖が深く記憶されるのは、将来同様の状況に陥ることを回避しようという、自己防衛本能と深い関わりがあると考えられています。

 

幼い子供は親に頼らなければ生きていけない存在であるため、親を客観的に見て批判することはほぼできないといってよいでしょう。たとえば、幼い子供が「うちの母親は気分にムラがあって突然怒鳴ることがある。私に否はない」と判断することは難しいでしょう。代わって、子供は親に強く怒られると、自分が悪かったんだ、と解釈します。今回の事例でいえば、「関心を引こうとした自分が悪い」という解釈になるかもしれません。そしてその解釈を補強する理論を構築するうちに、「自分が関心を引きたいと思うと人は怒る」→「人に何かを要求すると嫌われる」→「誰も自分の要求や願望に興味なんか持ってくれない」→「要求や願望を持つ自分が悪い」→「自分は根本的に悪い」→「自分は人に好かれない」とネガティブな自己認識が形成しまう子供もいることでしょう。

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ネガティブな自己認識の形成過程は、恐怖体験の頻度や強度、遺伝的要素、外部環境、経験等のさまざまの要素が作用するため、まだ解明されていない点がたくさんあります。そのため、幼少期の体験だけから全てを説明することはできません。しかし、幼少期を探ることは、自分の考え方・感じ方の傾向を知る良い糸口となるでしょう。

 

認識のズレを持つことは人間である限り避けられないと私は考えています。大切なのは、その認識のズレ、そして自己認識が日常生活や将来の夢を叶える上で妨げとなってしまっているときに、きちんと察知して対処してあげることだと思います。

 

サイコセラピー(カウンセリング)では、こうした認識のズレやネガティブな自己認識を捉え、修正していくことができます。自分のことだから自分でできるはずだと考えがちですが、何十年と身に付いてしまった考え方・感じ方の癖に自分で気付くことは想像以上に難しいことです。自分の殻から抜け出してもっと自由になりたい、もっと幸せになりたいと思うのに、どうしたらいいか分からず停滞感を感じている方は、セラピストに相談してみるのもよいでしょう。

 

次回「ネガティブな自己認識2」では、ネガティブな自己認識を察知するコツをご案内いたします。

 

長谷川由紀

www.yukihasegawa.org

 

☆おことわり☆

本ブログ内の記事は、精神科・心療内科等での治療を代替するものではありません。必要に応じて医師・心理カウンセラー等に直接ご相談ください。